えびせんの学習記録

勉強した内容を自分向けに書き留めていくブログ。読み返す気が失せるので式や計算はなるべく省略。

モーターの仕組みと『インバーター』の役割

はじめに

モーター自体は身近かつ昔から存在する技術であるが、自動車の駆動用に広く用いられるようになったのはここ最近のことである。また、モーターとセットで “インバーター” という単語を耳にしたことがあるという人も多いのではないだろうか。今回は、電気そして磁気という目に見えない力を扱いながら自動車を走らせる、EV用モーターの仕組みとインバーターの役割について解説していく。

モーターが回転する原理

モーターは電気エネルギーを駆動力という物理的なエネルギーへと変換する機械であるが、そこで利用されるのは電気が流れるときにその周囲に発生する磁界である。

モーターが磁石と磁石の間に生じる磁力を利用していることは広く知られていることだが、先の磁界とはこの磁力で満たされている世界であり、空間である

磁石で磁石あるいは鉄でできたものを引き寄せると、引き付けている間は物体が運動するが、双方が接触したところで運動は止まる。磁石同士の反発力の場合も同様に、磁力が作用の限界となる距離まで双方が離れると運動は終わりをむかえる。

これに対しモーターが電気自動車を駆動させるには、モーターは連続的に回り続けていなければならない。そこで、モーターは連続的に力を得るべく、磁界を回転させている

回転する磁界を追いかけるようにローターが回転するも、ローターが回転すると同時に磁界も回転する。これがモーターが動作する原理である。この回転する磁界を回転磁界と呼ぶ。

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回転磁界

インバーターの役割

前述した回転磁界は、電流の向きが周期的に変化する交流によって作り出されるが、EVの動力源であるバッテリーから得られるのは直流である。そこで、バッテリーから供給される直流を交流に変換する役割をインバーターは担っている※詳しい電力変換の原理については こちらの記事 で解説している。

denden-mushi.hatenablog.jp

インバーターはさまざまな電圧・周波数の交流を自在に作り出すことができる (VVVF: Variable Voltage Variable Frequency)。交流の周波数とモーターで形成される回転磁界の回転数は一致する。つまり、インバーターで交流の周波数を制御することによってモーターの回転数を自在に操ることが可能になる

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インバーターの役割

EVでは、ドライバーのアクセル操作などを基に算出された目標速度に合わせる形でインバーターが交流を発生させ(これによって回転磁界が形成される)、レゾルバと呼ばれるローター角センサーでモーターの回転数を監視し、車速をコントロールしている。

同期モーターと非同期モーター

EVの駆動用に用いられるモーターは同期モーターと呼ばれるものが主流である。同期モーターは回転磁界の回転に完全に同期しながら回転する。

回転磁界の回転数 = モーターの回転数

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磁石界磁型交流同期モーターの構造

一方で、回転磁界とモーターの回転数が同期せず、モーターの回転数を少し上回る回転数で回転磁界が回るモーターも存在する。これは、非同期モーター(誘導モーター)などと呼ばれる。

回転磁界の回転数 ≠ モーターの回転数

非同期モーター(誘導モーター)は高価な永久磁石を使わないので安価であるといった特徴があるが、小型化が難しく、トルク制御、回転数制御が複雑になるため、EVの駆動用モーターとしては現在主流にはなっていない。

  同期モーター 誘導モーター
体積  〇  △
効率    〇
高速回転    ◎
始動トルク    〇
高速時トルク  △  〇
制御性  〇  △
コスト  △  〇

まとめ

以下の理由から、EVのモーター駆動にはインバーターが欠かせない存在である。

モーターは連続的に力を得るために磁界を回転させている ⇒ 回転磁界

回転磁界は交流によって形成され、インバーターが直流を交流に変換する役割を担っている

インバーターで交流の周波数を制御することによって、モーターの回転数を自在に操ることが可能となる

 

参考文献:

見城 尚志, 佐渡 友茂 『メカトロニクスのモーター技術』 技術評論社

Motor Fan illustrated Vol.166 『よくわかる電動車』 三栄

Motor Fan illustrated Vol.184 『よくわかるモーター』 三栄