えびせんの学習記録

勉強した内容を自分向けに書き留めていくブログ。読み返す気が失せるので式や計算はなるべく省略。

『等価直列抵抗(ESR)』とコンデンサの周波数特性

はじめに

以前こちらの記事で、インバーターに構成されている受動素子(平滑コンデンサ)について解説したが、コンデンサの周波数特性を理解することは、インバーターの設計時に欠かすことのできない重要な要素であるといえる。そこで今回は、コンデンサの周波数特性のなかで、インピーダンスの大きさ|Z|と等価直列抵抗(ESR)について解説していく。

denden-mushi.hatenablog.jp

等価直列抵抗(ESR)

理想のコンデンサインピーダンスZは、角周波数をω、コンデンサの静電容量をCとすると、以下のような式で表わされる。

Z=\dfrac{1}{j\omega C}

式より、インピーダンスの大きさ|Z|は下図のように周波数に反比例して減少する。理想的なコンデンサでは損失が無いため、等価直列抵抗 (Equivalent Series Resistance: ESR) は0となる。

https://article.murata.com/ja-jp/article/impedance-esr-frequency-characteristics-in-capacitors より引用

しかし、実際のコンデンサには、容量成分C以外に誘電体や電極などの損失による抵抗Rや、電極やリード線などによる寄生インダクタンスLが存在する。このため、|Z|の周波数特性は下図が示すようにV字のような曲線となる。

理想のコンデンサと実際のコンデンサ

https://article.murata.com/ja-jp/article/impedance-esr-frequency-characteristics-in-capacitors より引用

コンデンサの周波数特性

ここからは、コンデンサインピーダンスの大きさ|Z|と等価直列抵抗(ESR)が、上の図のような形の曲線となる理由を順を追って解説していく。 

低周波領域

周波数が低い領域における|Z|は、理想のコンデンサと同じように周波数に反比例して減少する。ESRは、誘電体の分極の遅延による誘電損失に相当する値を示す。

② 共振点付近

周波数が高くなると、ESLやESRの影響で|Z|の挙動は理想のコンデンサから外れ、極小値を示す。|Z|が極小値となる周波数を自己共振周波数と呼び、このとき |Z|=ESR となる。自己共振周波数を超えると、素子の特性がコンデンサからインダクタに変わり、|Z|は増加に転じる。自己共振周波数より低い領域を容量性領域と呼び、高い領域を誘導性領域と呼ぶ。ESRについては、誘電損失に加えて電極起因による損失分が影響する。

③ 高周波領域

共振点から更に高い周波数領域において|Z|は、寄生インダクタンスLによって特性が決まる。高周波領域の|Z|は、以下の式によって近似することができ、周波数に比例して|Z|は増加する。ESRについては、電極の表皮効果や近接効果の影響が現れてくる。

Z=j\omega L

まとめ

ここまで、コンデンサの周波数特性について説明したが、重要なのは、寄生成分である等価直列抵抗(ESR)は、周波数が高くなると無視できないということである。コンデンサが高周波で使用されるケースが多くなっているのに伴い、ESRとESLは静電容量Cと同様に、コンデンサの性能を示す重要なパラメータとなっている

 

参考文献:

技術記事 『コンデンサのインピーダンス ESRの周波数特性とは?』 村田製作所

Electrical Information 『『等価直列抵抗(ESR)』と『等価直列インダクタンス(ESL)』とは?【コンデンサ】』