リチウムイオン電池の劣化のメカニズムと長持ちさせる使い方
はじめに
スマートフォンを長期間使い込むと段々と電池の持ちが悪くなるという現象はよく知られていることである。これは、スマートフォンに搭載されているリチウムイオン電池が劣化することによって引き起こされる。
リチウムイオン電池の劣化の原因として「容量の低下」と「内部抵抗の上昇」があげられる。今回はこれらの劣化のメカニズムと長持ちさせる使い方について解説していく。
容量の低下
充放電が行われる際、電池内部では以下のようにリチウムイオンが移動する。
リチウムイオン電池の電池容量はこのリチウムイオンの量に相当する電気量といえる。
“電池容量=リチウムイオンの量”
そして使用できるリチウムイオンの量が低下すると電池容量劣化となる。
電池は化学反応で充放電が行われるが、同時に起こる副反応でリチウムイオン量は減少してしまう。そのため、容量劣化が全く起きないように使用するのは難しい。
しかし、これらの反応速度は温度に依存するので、電池を高温下で使用しないことで劣化速度は抑制できる。逆に超低温(マイナス20℃)では反応が鈍化し電池として機能しなくなる。
内部抵抗の上昇
前述した通り、充放電を行うと正極および負極の活物質の中にリチウムイオンが出入りする。ここで活物質の中にイオンが入り込めば体積は膨張、逆に抜け出てくると収縮する。
一方で活物質は正極ならアルミ箔、負極側であれば銅箔といった集電箔がそれぞれの表面に塗布されるかたちで集電電極と一体となっているが、この部分ではイオンの出入りはないので膨張収縮はない。
そこで活性物質部分だけが膨張収縮すると膨張差から歪みが生じる。これを繰り返していると、やがて集電電極と活性質の剥離、集電電極や活物質のクラックが生じ、徐々にその範囲が拡大していく。
こうなると、電気が発生する活物質とその電気を集める集電電極との間の接触面積が減る、つまり“電気の通り道が狭く”なり、電池内部の抵抗は高くなり電気が流れにくくなる。
このような状況を避けるためには下記の2点に気を付ける必要がある。
■満充電・過放電状態にしないこと
集電電極と活物質の歪みは充電状態に比例するので、その歪みが最大・最小となる領域を使わないようにする。
■急速充電を行わないこと
急速充電を行うと集電電極と活物質の歪みを急激に引き起こすのでこれを避ける。
まとめ
■リチウムイオン電池の劣化の原因は「容量の低下」と「内部抵抗の上昇」
■「容量低下」は電池を高温下で使用しないことで抑制できる。
■「内部抵抗の上昇」は満充電・過放電状態を避けること、急速充電を行わないことで抑制できる。
参考文献:
Motor Fan illustrated Vol.178 『よくわかるバッテリー』 三栄