えびせんの学習記録

勉強した内容を自分向けに書き留めていくブログ。読み返す気が失せるので式や計算はなるべく省略。

全個体電池の特徴とそのメリット

はじめに

EVに搭載すれば、

「安全性が向上する」

「航続距離が倍になる」

「価格が安くなる」

「充電が速くなる」

などと最近巷で喧伝されている“全個体電池”。

そもそもこの全個体電池とは一体何者なのだろうか。今回は全個体電池の特徴とそのメリットについて解説していく。

全個体電池の特徴

全個体電池とはリチウムイオン電池の電解液を固体に置き換えたものである。電解質が固体なので正負極材が触れ合う心配がなく、セパレータが無い。

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全個体電池

ただし、全個体電池も電解液式のリチウムイオン電池と同じように正極材にリチウム金属酸化物を使用しており、正負極間でリチウムイオンをやり取りして充放電を行うという点ではリチウムイオン電池と変わらない。

また、電池のエネルギー密度は正負極材に何を使うかでほぼ決まり、単に電解質を固体にしただけでは性能は大きく変わらない。

それでは全個体電池に大きな期待が寄せられているのはなぜだろうか。

全個体電池のメリット

全個体電池には電解質が固体であることによって以下のようなメリットがある。

■強固な保護構造が不要

リチウムイオン電池の電解液は非常に燃えやすいため、クルマの衝突時にも破損させない強固な保護構造が必要となる。

一方で固体電解質にはそのようなリスクがないため、特別な保護構造が不要となる。

さらにセルごとに溶媒を密封する必要がないため、複数の電極材と電解質を積層でき、ユニットとしてのエネルギー密度を高めることができる。

■温度管理が簡易化できる

リチウムイオン電池はセパレーターにポリプロピレン等を使用しており、高温になると劣化・熔損のリスクがある。

これを防ぐためにセルごとに冷却システムが必要となるが、セパレータを持たない全個体電池であればその心配はない。

また、有機溶媒は-30℃以下になると電解質の粘度が高まって抵抗が増大し、使いものにならなくなるが、固体電解質は-40℃でも実用性能が維持できる。そのため加温システムも不要となる。

■サイクル寿命が長い

リチウムイオン電池は電解液の中をリチウムイオン以外の物質も移動できるため、副反応が発生し電池性能を低下させる。

一方、全個体電池の場合電解質内の移動はリチウムイオンだけなので副反応の影響を受けない。

まとめ

巷で全個体電池に大きな期待が寄せられているのは、以下のようなメリットがあるからである。

■「安全性が向上する」

全個体電池は電解質有機溶媒を使用しないため、発火や爆発のリスクが少ない。

■「航続距離が倍になる」

液漏れ防止のための強固な構造が不要になること加え、積層することによって個別のケースもいらなくなるため、同じ体積に多くのセルが詰められる。繊細な温度管理システムも不要になるため、それによって空いた空間も電池の搭載スペースとして使用できる。

「価格が安くなる」

前述した通り液漏れ防止のための強固な構造が不要になること加え、積層することによって個別のケースもいらなくなり、繊細な温度管理システムも不要になるため、安く製造できる。

■「充電が速くなる」

高温に強く内部抵抗も小さいため、大電流の出し入れが可能になり、充電時間を大幅に短縮できる。

 

参考文献:

Motor Fan illustrated Vol.178 『よくわかるバッテリー』 三栄

電池の情報サイト 『【電池はなぜ劣化する?】リチウムイオン電池の劣化のメカニズム(原理)』

リチウムイオン電池の劣化のメカニズムと長持ちさせる使い方

はじめに

スマートフォンを長期間使い込むと段々と電池の持ちが悪くなるという現象はよく知られていることである。これは、スマートフォンに搭載されているリチウムイオン電池が劣化することによって引き起こされる。

リチウムイオン電池の劣化の原因として「容量の低下」「内部抵抗の上昇」があげられる。今回はこれらの劣化のメカニズムと長持ちさせる使い方について解説していく。

容量の低下

充放電が行われる際、電池内部では以下のようにリチウムイオンが移動する。

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リチウムイオン電池の構造

リチウムイオン電池の電池容量はこのリチウムイオンの量に相当する電気量といえる。

“電池容量=リチウムイオンの量”

そして使用できるリチウムイオンの量が低下すると電池容量劣化となる。

電池は化学反応で充放電が行われるが、同時に起こる副反応でリチウムイオン量は減少してしまう。そのため、容量劣化が全く起きないように使用するのは難しい。

しかし、これらの反応速度は温度に依存するので、電池を高温下で使用しないことで劣化速度は抑制できる。逆に超低温(マイナス20℃)では反応が鈍化し電池として機能しなくなる。

内部抵抗の上昇

前述した通り、充放電を行うと正極および負極の活物質の中にリチウムイオンが出入りする。ここで活物質の中にイオンが入り込めば体積は膨張、逆に抜け出てくると収縮する。

一方で活物質は正極ならアルミ箔、負極側であれば銅箔といった集電箔がそれぞれの表面に塗布されるかたちで集電電極と一体となっているが、この部分ではイオンの出入りはないので膨張収縮はない。

そこで活性物質部分だけが膨張収縮すると膨張差から歪みが生じる。これを繰り返していると、やがて集電電極と活性質の剥離、集電電極や活物質のクラックが生じ、徐々にその範囲が拡大していく。

こうなると、電気が発生する活物質とその電気を集める集電電極との間の接触面積が減る、つまり“電気の通り道が狭く”なり、電池内部の抵抗は高くなり電気が流れにくくなる。

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内部抵抗の上昇

このような状況を避けるためには下記の2点に気を付ける必要がある。

■満充電・過放電状態にしないこと

集電電極と活物質の歪みは充電状態に比例するので、その歪みが最大・最小となる領域を使わないようにする。

■急速充電を行わないこと

急速充電を行うと集電電極と活物質の歪みを急激に引き起こすのでこれを避ける。

まとめ

リチウムイオン電池の劣化の原因は「容量の低下」「内部抵抗の上昇」

■「容量低下」は電池を高温下で使用しないことで抑制できる。

■「内部抵抗の上昇」は満充電・過放電状態を避けること、急速充電を行わないことで抑制できる。

 

参考文献:

Motor Fan illustrated Vol.178 『よくわかるバッテリー』 三栄

電池の情報サイト 『【電池はなぜ劣化する?】リチウムイオン電池の劣化のメカニズム(原理)』